
2028年春夏、Fashionは「静かな転換点」を迎えます
2028年春夏のファッショントレンドは、これまでのような派手な装飾や強いインパクトだけを追求する方向から、**「構造化された明瞭さ」や「人間らしい感覚」**へと重心を移していくと考えられます。
AIの活用が日常的になり、誰でも短時間で大量のビジュアルを生み出せる時代になりました。その一方で、これからのFashionでは、
「誰がつくったのか」
「なぜこのデザインなのか」
「どのような考えから生まれたのか」
という、人間による意図や判断そのものが、これまで以上に価値を持つようになります。また、身体と環境に調和する素材、過度な刺激を抑えた色や表面、日常の心地よさを支えるデザインも重要になります。
株式会社ALBAでは、国内外の数多くの文献をもとに、2028年春夏のFashionを大きく3つの方向性から読み解き、記事にまとめました。
・「人間の創造性を中心に据えるデザイン」
・「身体と自然が共生する素材」
・「心と暮らしを安定させる静かなデザイン」
本稿では、この3つの潮流が2028年春夏のFashionにどのような変化をもたらすのか、さらにテキスタイルデザインや空間づくりにどのような可能性があるのかを、ALBA独自の視点から考えていきます。


2028年春夏を支配する3つの大きな潮流
2028年春夏のFashionを考えるうえで、特に重要になるのが次の3つの潮流です。
1.人間の創造性を中心に据えるデザイン・Human Command Systems
AIがデザイン制作を支援する時代だからこそ、人間の感性や判断、作者性が価値を持つようになります。
2.身体と自然が共生する素材・Bio-Symbiotic Realism
身体の快適さと環境との調和を前提に、通気性や軽さ、透明感、触感などを重視した素材が広がります。
3.心と暮らしを安定させる静かなデザイン・Stabilising Cultures
情報や刺激があふれる社会の中で、安心感や落ち着き、心地よさを与える色・素材・形が重要になります。
ALBAでは、この3つを単なる「流行」としてではなく、消費者が商品を選ぶ基準そのものが変化していく兆候として捉えています。

1.人間の創造性を中心に据えるデザイン
テキスタイルにも「人間の判断の痕跡」が表れる
この考え方は、テキスタイルデザインにも大きく関係します。
例えば、
- 織りの密度に微妙な変化をつける
- プリントを完全に均一にせず、重なりやズレを活かす
- 手描きならではの線の揺らぎを残す
- 生地の表面と裏面で異なる表情を持たせる
- 柄の一部に意図的な余白をつくる
といった表現です。一見すると「不完全」に見える部分が、実はデザインの重要な要素になります。すべてが均一で、完璧に整ったデザインではなく、人間が考え、選び、調整したことが感じられるデザイン。そこに、これからのFashionにおける新しい価値が生まれるのではないでしょうか。
ALBAでは、この方向性を、「判断の痕跡をデザインする」という言葉で捉えています。AIを否定するのではなく、AIを道具として使いながら、最終的な判断を人間が行う。
その人間らしい編集力こそが、これからのテキスタイルデザインにとって重要になると考えています。


2.身体と自然が共生する素材
「機能」から「身体との調和」へ
2つ目の大きな潮流は、身体と環境との共生です。これまでのFashionにおける高機能素材は、「暑さを防ぐ」「寒さを防ぐ」「水を弾く」「強度を高める」など、特定の機能を強く打ち出すものが多くありました。
しかし2028年春夏に向けては、単純な高機能性だけではなく、身体が自然に快適でいられることそのものが重要になっていくと考えられます。
例えば、
- 非常に軽い素材
- 空気を通す構造
- 半透明で軽やかな織物
- マットで落ち着いた表面
- ひんやりと感じられる触感
- 穴や隙間を活かした開孔構造
- 身体の動きに合わせて変化する素材
などです。

「空気の流れ」をデザインする
特に注目したいのが、空気の流れを考えた素材設計です。これまでは、衣服の機能性というと「外部から身体を守る」という発想が中心でした。これからは、
「身体と外部環境の間に、どのような空気の流れをつくるか」
という考え方が重要になります。レイヤリングも、単純に重ね着をして保温するのではなく、異なる素材を組み合わせながら、身体の周囲に快適な空気環境をつくるという考え方へ変化していく可能性があります。これは、Fashionだけの話ではありません。
住宅やインテリアにおいても、
- 光の入り方
- 空気の流れ
- ファブリックの触感
- 壁や床の質感
- 湿度や温度の感じ方
など、身体が感じる環境そのものをデザインすることが重要になっています。Fashionと空間デザインは、これからますます近づいていくのではないでしょうか。


3.心と暮らしを安定させる静かなデザイン
「ミニマル=地味」ではない
3つ目の潮流は、心と暮らしを安定させるデザインです。SNS、動画、広告、ニュース、AIによる大量の情報。私たちは毎日、非常に多くの情報や刺激に囲まれています。
その反動として、Fashionにも「刺激を増やす」のではなく、刺激を減らし、心地よい状態をつくるという役割が求められるようになります。
ここで重要なのは、「静かなデザイン=地味なデザイン」ではないということです。むしろ、色・素材・柄・シルエットを細かく設計することで、見る人や着る人に安心感を与える。そこに高度なデザイン性が生まれます。

低光沢、柔らかな表面、触れたくなる素材
素材では、
- 低光沢
- マットな質感
- 柔らかな表面
- 自然な凹凸
- 触れたくなるような素材感
などが重要になります。強い光沢や派手な装飾によって目を引くのではなく、近づいたときに初めてわかる質感。遠くから見ると静かだけれど、触れてみると豊かな表情がある。そんな素材が、これからの「新しい贅沢」の一つになっていくと考えられます。


動きと静止をつなぐシルエット
シルエットについても、極端なフォルムより、「動いているときも、静止しているときも美しい」という考え方が重要になります。身体を締め付けすぎず、動きに合わせて自然に形が変化する。日常生活の中で無理なく着ることができ、それでいて美しい。
こうしたデザインは、ウェルビーイングという観点からも注目されるでしょう。Fashionは「人からどう見られるか」だけではなく、「自分自身がどう感じるか」を重視する方向へ、少しずつ変わっていくのではないでしょうか。

ALBAが考えるSS28のテキスタイル
では、ここまで紹介した3つの潮流を、実際のテキスタイル企画にどのように落とし込めるでしょうか。
ALBAでは、次のように考えています。
| SS28の方向性 | テキスタイルへの落とし込み |
|---|---|
| 人間の創造性を中心に据える | 手描きの線、柄のズレ、プリントの重なり、織り密度の変化 |
| 身体と自然が共生する | 軽量素材、通気構造、半透明素材、マットな表面、自然な凹凸 |
| 心と暮らしを安定させる | 低光沢、柔らかな触感、穏やかな柄、落ち着いた色、余白 |
ここでALBAが特に注目したいのは、「触感」と「柄」の関係です。柄だけを見せるのではなく、柄・素材・光・身体を一つのデザインとして考える。
例えば、細かな植物柄をマットな素材にプリントすることで、遠くからは静かな無地に近く見え、近づくと植物のディテールが浮かび上がる。
あるいは、透明感のある素材に繊細な柄を重ねることで、動いたときに柄の見え方が変化する。こうした**「近づいて初めてわかるデザイン」**は、SS28の方向性と非常に相性が良いと考えています。


住宅リノベーションにもつながるSS28の考え方
今回の3つの潮流は、Fashionだけに限定されたものではありません。住宅リノベーションの企画・提案にも、多くの共通点があります。例えば、室内空間においても、
- 光を柔らかくする
- 空気が流れる空間をつくる
- 足や手が触れたときに心地よい素材を選ぶ
- 木や布など自然素材の質感を活かす
- 情報量を減らして視覚的な落ち着きをつくる
といった考え方が重要になります。つまり、Fashionが身体を包むデザインだとすれば、住宅は身体を取り囲むデザインとも言えます。衣服と空間。一見すると異なるジャンルですが、「身体がどのように感じるか」を起点に考えると、非常に近いところにあります。SS28のFashionトレンドは、これからの暮らしや空間づくりを考えるうえでも、一つのヒントになるでしょう。

2028年春夏、柄はどう変わる?
では、テキスタイルデザインを考えるうえで重要な「柄」についてはどうでしょうか。SS28では、単純に派手な柄や大柄が増えるというよりも、素材との関係性を重視した柄が重要になると考えています。例えば、
・自然をそのまま描くのではなく、自然の構造を感じさせる柄
植物、葉、花、石、水、微生物などをリアルに描写するだけではなく、それらの形やリズム、繰り返し、細胞構造などを抽象化する。
・手描きの揺らぎを活かした柄
デジタルで完全に均一化するのではなく、線の太さや濃淡、インクのにじみなど、人間の手による微細な変化を残す。
・余白を活かした柄
柄で画面を埋め尽くすのではなく、無地の部分を積極的に残すことで、素材そのものの表情を引き立てる。
・見る距離によって表情が変わる柄
遠くから見ると静かな表情、近づくと細かなディテールが見えてくる。こうした柄の設計は、SS28の「静かな豊かさ」という方向性と非常に相性が良いでしょう。


SS28の「新しい贅沢」とは?
2028年春夏のFashionを考えるとき、私たちは「新しい贅沢」という言葉にも注目しています。これまでの贅沢は、
希少性
高価格
華やかさ
ブランド性
などによって表現されることが多くありました。しかし、これからの贅沢は少し違ってくるかもしれません。それは、
「自分の身体が心地よい」
「長く使いたいと思える」
「つくり手の意図が感じられる」
「触れたときに気持ちいい」
「余計な情報がなく、落ち着く」
といった価値です。つまり、「見せる贅沢」から「感じる贅沢」へ。これがSS28を読み解くうえで、ALBAが最も重要だと考えているポイントです。

まとめ|SS28は「人間の判断」が贅沢になる季節
2028年春夏のFashionでは、
・人間の創造性を中心に据えること。
・身体と自然が共生すること。
・心と暮らしを安定させること。
この3つが、重要なデザインテーマになっていくとALBAでは考えています。AIが進化し、誰でも簡単に大量のデザインをつくれるようになったからこそ、人間が考え、選び、編集することの価値が高まっていく。
そして、機能性だけを追求するのではなく、身体と環境の関係を考え、触感や空気感まで含めてデザインする。さらに、情報や刺激が多すぎる時代だからこそ、静かで心地よいものに価値が生まれる。
2028年春夏のFashionは、単なる「流行」ではなく、私たちがこれからどのように暮らし、どのように身体と向き合うのかを考えるためのデザインの方向性なのかもしれません。
ALBAでは、こうした世界のトレンドをもとに、テキスタイルの柄・素材・色・プリント表現を独自の視点から読み解き、実際の商品企画へつなげています。「流行を追う」のではなく、「これから何が求められるのか」を考えます。

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- 2028年カラートレンド予測|光と静けさがつくる新しい色彩
- SS28テキスタイル企画メモ|素材・柄・仕上げの方向性
- 住宅リノベーション×Fashion|身体性でつながる空間設計
参考文献
- FashionUnited「Spring Summer 2028 Trend Intelligence: The Rise of Structured Clarity」
- C2 Fashion Studio「Spring Summer 2028 Macro Trends | The Cultural Logic of Structured Clarity」
- C2 Fashion Studio「Spring Summer 2028 Fashion Trend: The Sensory Minimalism Shift」
- Tiffany Hill「SS28 womenswear trends: The new luxury is emotional restoration」
- C2 Fashion Studio「Jewelry Trend Forecast Spring Summer 2028」
- FashionUnited「SS28 Preview: The modern flow of performance design」
- LinkedIn「Fabric Trends AW27/28: Surfaces, Touch & Material Intelligence」
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執筆:代表取締役・テキスタイルデザイナー安田信之:株式会社ALBA・[ 著者情報 ]