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遊び心といたずら心が、テキスタイルに魔法をかける

テキスタイルデザインは、オーダーを丁寧に受け止め、忠実に形にすることが大切です。けれど、その前提のうえにほんのひと振りの「遊び心」と「いたずら心」を添えると、柄はぐっと生き生きと変わります。1枚だけ外れた花びら、わずかに異なる大きさの花、細い一本のライン。小さな仕掛けが、見る人の心にゆらぎと笑みを生みます。

オーダーを守りながら、そっと遊ぶ

「お花を描いてください」というオーダーが来たとします。すべての花に同じ割合で花びらを描き、まったく同じ大きさ、同じ長さで美しく整えれば、デザインはきちんと成立します。それはとても大切な仕事です。クライアントの言葉を愚直に受け取り、忠実に描き起こす力は、デザインの土台になります。

でも、そのうえで少しだけ遊んでみる。たとえば、一輪だけ花びらが1枚外れた花をつくる。花の大きさをほんのわずかに変えてみる。どこか一か所だけ、細いラインで花びらとは違う表現を忍ばせる。オーダーには含まれていない、ほんの小さな変化です。けれど、その「ちょっとした違い」が、柄に呼吸を与えます。

心のゆらぎが、布を通じて届く

会話にも似ているところがあります。「今日は心地よい1日ですね」と言われたときに、その言葉を繰り返して「今日はほんとに心地いい1日ですよね」と返すと、少しそっけなく感じることがあります。例えば「こういう日は、何もしないことにも才能がいりますね」と返したりすると、相手の心もほっと和らぎ、会話に小さな動きが生まれます。

テキスタイルデザインも同じです。心にゆらぎをつくる小さな仕掛けは、クライアントにとどまらず、その布を身に纏う人、店頭でふと手に取る人にも静かに届きます。以前、今回の水玉の模様の中に、1つだけさくらんぼが入っているんですよとお話ししたところ、デザイナーさんが「面白いですね」と笑ってくださいました。しばらくして製品の販売時期になり、店頭へ商品を見に行くと、販売員の方が、私に対してまったく同じ説明をしてくださいました。「実はね、ここにさくらんぼが隠れているんです」と。

そんな小さないたずら心が、誰かの日常にほっこりとした時間をつくります。これからも、遊び心を忘れずにテキスタイルデザインを描いていきたいと思います。


執筆:代表取締役・テキスタイルデザイナー安田信之:株式会社ALBA・[ 著者情報 ]