株式会社ALBAでは、クライアントからいただいたブリーフィングをもとに、商品の方向性を整理し、紙や画材を選び、手描きによる図案制作からデジタル処理、リピート、色調整、最終確認、納品まで、一つひとつの工程を積み重ねながらオリジナルのテキスタイルデザインを制作しています。

今回は、実際のクライアントワークの流れを参考にしながら、テキスタイルデザインがどのように一枚の紙から商品に使えるプリント図案へと変化していくのかを、作業工程に沿ってご紹介します。
※なお、この記事で使用しているブリーフィング資料や制作画像は、クライアントの秘密保持に配慮し、実際の案件で使用したものではありません。
実際の制作工程を分かりやすくご覧いただくために、ALBAがオリジナルで作成したサンプルの指示書をもとに、架空のオーダーとして制作したものを使用しています。
1.まずはクライアントからのブリーフィング
テキスタイルデザインの制作は、いきなり絵を描き始めることからスタートするわけではありません。
まず大切なのが、クライアントがどのような商品をつくろうとしているのかを理解することです。
そこで最初に確認するのが、デザイン制作の方向性をまとめたブリーフィングです。
例えば、
- どのようなアイテムに使用するのか
- トップスなのか、ボトムなのか
- ワンピースなのか、ジャケットなのか
- 春夏(SS)なのか、秋冬(AW)なのか
- レディースなのか、メンズなのか
- どのようなブランド・商品なのか
- どのようなイメージを持っているのか
- 色や雰囲気はどうするのか
- 市場にどのような商品として出したいのか
など、さまざまな情報を確認します。
ここで重要なのは、単に「花柄を描いてほしい」「幾何学柄をつくってほしい」という依頼だけを見るのではなく、その柄が最終的にどのような商品になるのかを考えることです。
同じモチーフを使ったとしても、Tシャツに使用するのか、ワンピースに使用するのか、スカーフに使用するのかによって、適した柄の大きさや密度、構成は変わってきます。
そのため、ブリーフィングを確認しながらクライアントの意図を整理し、どのような方向性でデザインを仕上げていくのか、構想を練っていきます。
テキスタイルデザインは「絵を描く仕事」であると同時に、「商品を想像する仕事」でもあります。

2.デザインを描く前に「紙」を選ぶ
方向性が決まったら、いよいよ制作に入ります。
ここで最初に考えるのが、意外に思われるかもしれませんが、どの画材を使うかよりも、どの紙に描くかということです。
ALBAでは、手描きによるテキスタイルデザインを大切にしています。
筆で描くとき、紙の質感によって絵の具やインクの乗り方が変わります。

筆が紙の上を走る感覚。
インクが紙に吸い込まれていく速度。
線のかすれ。
絵の具のにじみ。
筆圧による濃淡。
こうした微妙な違いが、最終的なプリント柄の表情につながっていきます。
だからこそ、使用する紙は非常に重要です。
どのような紙に描くのか。
そこから、デザインづくりが始まります。
今回のサンプル制作では、ワトソン紙を使用しました。
筆の呼吸やタッチ感を活かし、デジタルだけでは表現しにくい、手描きならではの表情を残すことを意識しています。

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3.筆を使ってモチーフを描いていく
紙と画材が決まったら、実際にモチーフを描いていきます。
ここでは、完成した柄を最初から頭の中で完全に決めてしまうというよりも、ブリーフィングで共有された方向性をもとに、モチーフの形や筆のタッチ、線の強弱などを組み立てていきます。
手描きの工程で大切なのは、デジタルでは均一に整えられてしまう部分に、人の手による微妙な揺らぎを残すことです。
線の太さが少し変わる。
絵の具の濃淡が変わる。
筆の入り方や抜き方が変わる。
紙によってインクのにじみ方が変わる。そうした小さな違いが重なって、テキスタイルデザイン独特の表情が生まれます。
ALBAでは、こうした手描きの表情を活かしながら、その後のデジタル工程へとつないでいきます。

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4.リピートを考えながら柄を構成する
筆での作業が進み、モチーフの方向性が見えてきたら、次に考えるのがリピートです。
テキスタイルデザインでは、一枚の絵として美しく描けているだけでは完成とはいえません。
実際の生地になったときに、柄が繰り返されても自然につながる必要があります。
例えば、上下に柄をつなげたときに境目が目立たない。
左右につなげたときにも、柄が途切れない。
そのように、上下左右へと柄が連続して広がっていく状態をつくっていきます。
これが、テキスタイルデザインにおけるリピートです。
一つのモチーフを描くことと、布地全体に広がる柄を設計することは、似ているようで大きく異なります。
どこで切れて、どこでつながるのか。
モチーフ同士の距離はどうするのか。
柄の密度はどうするのか。
生地になったときにどのように見えるのか。
こうしたことを考えながら、デザインを組み立てていきます。

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5.描いた原画をスキャナーでデジタルデータへ
手描きによる制作が進んだら、次はデジタル工程へ移ります。
描き上げた原画をスキャナーにセットし、デジタルデータとして取り込みます。
ここから、手描きで生まれたデザインを、実際の商品に使用できるテキスタイルデザインへと仕上げていきます。
ここで重要なのは、単純に原画を画像データとして取り込むだけではないということです。
スキャンしたデータを確認しながら、線の状態や濃淡、細かな表情などを整理し、次の工程へつなげていきます。

6.一枚の絵を「色ごとのレイヤー」に分ける
手描きで描いた原画をデジタル上で整理し、必要に応じて色ごとのレイヤーに分けながら、色調整やリピート処理ができる状態に整えていきます。


例えば、
- 線の部分
- ベースとなる色
- 濃い色の部分
- 淡い色の部分
- モチーフごとの色
など、それぞれを整理していきます。
こうして色ごとにデータを分けておくことで、ブリーフィングで指定された色や参考イメージに合わせて、細かな色調整を行うことができます。
「もう少し赤みを抑えたい」
「全体を少し落ち着いたトーンにしたい」
「この部分だけ色を変えたい」
といった調整にも対応しやすくなります。
つまり、手描きで生まれた表情を残しながら、デジタルの柔軟性を加えていくわけです。
これが、ALBAが大切にしている手描きとデジタルを組み合わせた制作方法の一つです。
7.柄をつなぎ、エンドレスに広げていく
色やモチーフの整理ができたら、さらにリピートの精度を高めていきます。
ここでは、モチーフを広い範囲につないでいき、上下左右に柄が連続するように調整します。
一見すると一枚の大きな絵に見えても、実際には一定の単位で繰り返されている。
それでも、つなぎ目が分からない。
このような状態をつくることが、テキスタイルデザインでは重要になります。
生地になったとき、どこからどこまでが一つの柄なのか分からないほど自然に広がっていく。
それが、エンドレスリピートです。
デザインとしての美しさだけではなく、実際に生地として使用されたときの見え方を想像しながら調整していきます。

8.実際にプリントアウトして目で確認する
デジタルデータ上で完成したと思っても、まだ納品ではありません。
ここで一度、インクジェットプリンターを使って実際にプリントアウトします。
なぜなら、モニターで見る色と、紙やプリントとして出力した色では、見え方が変わることがあるからです。
実際に出力したものを手に取り、
- 色はイメージ通りか
- モチーフの大きさは適切か
- 柄の密度はどうか
- リピートに不自然な部分はないか
- 線や細部に問題はないか
- データ上の不備がないか
などを目視で確認します。
画面の中だけで完結させず、実際に目で見て確認する工程を入れることで、最終的な完成度を高めていきます。

9.最終確認を行い、デジタルデータとして納品
プリントアウトしたものを確認し、必要に応じて修正を行います。
色、形、リピート、細かな不備などを一つずつ確認し、問題がなければ最終データとして整理します。
そして、クライアントへデジタルデータとして納品します。
これで、
ブリーフィング
↓
方向性の確認
↓
紙・画材の選定
↓
手描きによる原画制作
↓
リピート構成
↓
スキャン・デジタル化
↓
分色・レイヤー化
↓
色調整
↓
リピート処理
↓
プリントアウト
↓
最終確認
↓
データ納品
という、一連のテキスタイルデザイン制作工程が完了します。

後書き
商品として成立するテキスタイルデザインを
テキスタイルデザインは、ただ一枚の絵を描いて終わりではありません。使用するアイテムやシルエット、ブランドの世界観によって、適した柄の大きさや密度、色、構成は変わります。ALBAでは、一枚の絵として美しいかだけではなく、実際に商品になったときにどのように見えるのかまで考えながら図案を制作しています。
ALBAでは、既存のストック図案を販売するというスタイルではありません。 ご依頼ごとに商品の方向性やシーズン、ブランドのイメージを確認し、その案件のために新しい図案を描き起こします。紙や筆、モチーフ、構図、色など、一つひとつの要素を選びながら、その商品に合った表現を探していきます。
手描きによって生まれる筆の表情や微妙な揺らぎに、デジタルによる分色、色調整、リピート処理などを組み合わせることで、手描きの温度感と商品として必要な精度を両立させます。
ファッションや市場が変化する中で、過去の図案を繰り返すのではなく、**「今、この商品に必要な柄は何なのか」**を考える。その問いから、まだ存在していない柄を商品として成立するデザインへと形にしていくことが、ALBAのテキスタイルデザインです。
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ALBAのことや、普段どのようにテキスタイルデザインと向き合っているのかについては、こちらの記事でも詳しくご紹介しています。
→テキスタイルデザイン・オリジナル柄・プリント図案制作|株式会社ALBA
ここまでご紹介したように、ALBAのテキスタイルデザインは、単に柄を描いて納品する仕事ではありません。
商品の方向性を伺い、手描きの表情をつくり、デジタルで整え、実際に商品へ使用できるプリント図案へ仕上げていきます。
「自社の商品に合うオリジナル柄をつくりたい」
「イメージはあるけれど、どう柄にすればいいかわからない」
そのような段階からでも、お気持ちをお聞かせください。
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執筆:代表取締役・テキスタイルデザイナー安田信之:株式会社ALBA・[ 著者情報 ]