ALBAのクライアントには、ひとつのシーズンが終わると、また次のシーズンに声をかけてくださるアパレルデザイナーの方がおられます。
最初にご依頼いただいた頃から、気づけばシーズンごとのご依頼が一つひとつ積み重なり、10年、20年という時間になっている。
柄を通してブランドの変化や歩みに触れ、その時々のものづくりに関わりながら、長い時間をともに重ねてこられたこと。そのこと自体が、とても素敵なことだと感じています。

長い時間の中で育つブランドらしさ
最初にご依頼いただいた頃のことを思い返しながら、これまでに制作した柄を振り返る時間は、とても感慨深いものです。ブランドの方向性や表現は少しずつ変化していきますが、その中には変わらず受け継がれている雰囲気もあります。
どの程度新しく見せるのか。どこまでこれまでの印象を残すのか。そうした細かな感覚を共有しながら、次のシーズンに向けた柄を考えていきます。長くお付き合いを重ねることで、言葉だけでは伝えきれないブランドらしさも、少しずつ感じ取れるようになっていきます。

少し新しく、少しこれまでらしく
毎回まったく同じものをつくるのではなく、変化を取り入れながらも、そのブランドだと感じられる表現に仕上げていく。そのバランスを考えることは、テキスタイルデザインの大切な仕事の一つです。
これまでの積み重ねを大切にしながら、新しい柄や表現にも挑戦する。ときには、今までとは異なる印象の図案をご提案することもあります。それでも、どこかにそのブランドらしさが漂っている。そんなデザインを目指しています。
長い年月をかけて対話を重ねているからこそ、細かなニュアンスを共有しながら、無理なく制作を進めることができます。毎シーズンの仕事が、次の提案へ自然につながっていくことに、長いお付き合いならではの良さを感じています。

原画に込める、描き手の熱量
テキスタイルデザインは商業美術ですが、そこには人の手で描かれた絵画と同じように、描き手の熱量が加わっていると感じます。
ALBAでは、完成した図案だけでなく、制作した原画をデザイナーの方へお渡しすることもあります。以前、「ALBAからいただいた原画をお客様へのプレゼントにしています」「プリントされた洋服と並べて、店頭に額装して飾っています」と伺ったことがありました。
描いた原画が洋服とともに大切に扱われていることを知り、とても嬉しくなりました。柄をつくる仕事が、商品だけでなく、ブランドとお客様をつなぐ思い出の一部になっているように感じられたからです。

大切な贈り物を届けるように
ALBAを立ち上げる前に勤めていたテキスタイルデザインスタジオで、先輩から大切なことを教わりました。
「プリントの洋服を手に取る人の中には、自分へのご褒美として購入する方がいる。その方へ贈り物を届けるような気持ちで描きなさい」と。その言葉は、今もテキスタイルデザインに向き合うとき、私の中にある大切な心構えの一つになっています。
デザイナーの方がブランドの未来を思い描き、その先にいるお客様が洋服を手に取る。さらに、その洋服が誰かにとって特別な一着になる。その流れを想像すると、柄を描くことの責任と喜びを改めて感じます。
これまで積み重なってきた長い時間を大切にしながら、これからも一枚一枚の原画に心を込めて、ブランドの歩みに寄り添うテキスタイルデザインをお届けしていきたいと思います。

執筆:代表取締役・テキスタイルデザイナー安田信之:株式会社ALBA・[ 著者情報 ]