テキスタイルデザインの現場では、絵を描くだけでなく“言葉で伝える力”も欠かせません。デザインに込めた意図や感覚をクライアントに理解してもらうためには、絵と説明をどう組み合わせるかが成果を左右します。この記事では、絵を描くことと言葉による表現の両方で「理解と感情」を伝えるための考え方を、現場の視点からわかりやすく解説します。

1. 絵はもう一つの言語である
テキスタイルデザイナーにとって、絵は感情や季節を語る“もう一つの言語”です。花を描くとき、その蕾の柔らかさ、満開の勢い、散り際の静けさまでを表現できます。色彩やタッチ、構図の中には、言葉では伝えられない思いや空気感が宿ります。
一枚の絵には、季節感や素材の印象、ブランドの方向性までも凝縮されています。描くという行為は、思考を整理し、感覚を形にするクリエイティブなプロセスです。テキスタイルデザインの本質は、この“絵で語る表現力”にあります。

2. 言葉にすることの難しさ
普段から多くの絵を描き、描くこと自体を仕事にしている私たちにとって、言葉で説明することは意外に難しい作業です。
絵を使わずに意図や感覚を言葉として伝えるのは、まるで別の言語に翻訳するような感覚があります。特に、色のトーン、花柄の間隔、布地の質感など、視覚的要素を言語化するのは容易ではありません。
一方で、クライアントにとっては“言葉で共有される説明”が判断の基準になります。だからこそ、テキスタイルデザイナー側が言葉の力を磨くことは、作品の理解を深め、信頼関係を築くためにも欠かせない要素なのです。

3. 絵だけでは届かないこともある
絵を見ればすべてが伝わる──そう考えてしまうことがあります。ですが、実際のデザイン現場ではそう単純ではありません。
商業デザインは、クライアントとの共同作業です。目的やターゲット、使用シーンを共有せずに、絵だけを提示しても本当の意図は伝わりにくいものです。言葉による補足があるからこそ、相手にも明確なイメージが生まれます。
たとえば打ち合わせの場では、絵で感覚を提示し、言葉で背景を説明する。その“絵と言葉の往復”こそが、プロジェクトを成功に導く最大の鍵です。

4. 言葉と絵をつなぐデザイナーの表現力
テキスタイルデザインの仕事は、ただ美しい模様を描くことではなく、相手に「どう伝わるか」を設計することにあります。絵と言葉の説明を組み合わせることで、感性と理解を両立させるのです。
打ち合わせやプレゼンでは、絵の第一印象が心を動かし、言葉が理解と納得を生み出します。この二つを行き来できるデザイナーは、より強い説得力と信頼を得られます。
言葉にしすぎず、絵に頼りすぎない。その中庸にこそ、デザインの真価が宿ります。絵とことばを響き合わせることで、見る人の心に残るテキスタイルが生まれるのです。

株式会社ALBAテキスタイルデザイン事務所へのご依頼ご相談・お見積もりはお気軽にどうぞ。
執筆:代表取締役・テキスタイルデザイナー安田信之:株式会社ALBA・[ 著者情報 ]