はじめに
店頭やコレクションでも注目されるプリントデザインのトレンド「抽象柄(アブストラクトプリント)」。花や動物などの具象モチーフに並び、流れる線や面のリズムだけで構成されたテキスタイルデザインが人気を集めています。
なぜ今、再び抽象的なプリントが支持されているのでしょうか?
ここでは、テキスタイルデザイナーの視点から、その理由と魅力を紐解きます。

目次
1. 抽象柄が映える理由 ― 服の立体フォルムとの相性
洋服のフォルムは、人体の立体に沿う縦長のキャンバスです。ワンピース、ブラウス、スカートなどは、上から下へと視線を導く構図を描き出します。
この縦方向の流れこそが、都会的でスタイリッシュな印象を与える要素。アブストラクトプリントのリズムやラインは、この立体フォルムと自然に調和します。
構成的な線の動きが奥行きを生み、服のシルエットを邪魔せずむしろ引き立てます。だからこそ、テキスタイルデザイナーにとって抽象柄は「フォルムを活かすデザイン」アートプリントとして理想的なのです。

2. フォルムを主役にするアブストラクトデザインの魅力
抽象柄は“意味”ではなく“印象”を表現する柄です。モチーフの主張が控えめなため、着用者の動きや体のライン、服全体の構築美が際立ちます。無地では物足りないけれど、強い柄は避けたい――そんな時に最適なのが抽象柄。淡い筆致や流れるような曲線が、さりげない奥行きと抜け感を加えます。
今のトレンドキーワード「ニュートラル」「軽やかさ」との相性は抜群です。

3. 現代ファッションにおける抽象表現の意義
抽象柄が今の時代にフィットする理由は、「余白」と「自由解釈」にあります。
具象柄が“物語”を語るのに対し、抽象柄は“感覚”を伝えるデザイン。
アートと日常の境界が曖昧になった現代において、抽象柄は「日常に寄り添うアート」として自然に受け入れられています。デジタルツールの進化により、筆致やマチエール(質感)の再現も高精度に。
抽象的な表現に多層的な深みが加わり、従来以上に“アートをまとうような服”が実現可能となりました。

4. ブランド価値を高める抽象柄の活用法
市場では「無地」または「派手柄」の二極化が進む中、抽象柄はまさに“ちょうどいい個性”を演出します。控えめで上品、しかし確かな存在感をもつアブストラクトプリントは、スタイルにも年齢層にも広くフィットします。ブランド視点でも、抽象柄はアイテムを選ばず素材感を活かせる柔軟性があるため、コレクション全体に統一感と上質なムードをもたらします。テキスタイルデザインの現場で長年支持されるのも、その適応力の高さゆえです。

5. アートの自由をまとう服 ― 抽象柄プリントの本質
抽象画の起源は「形を描かず感情を表現する」という思想にあります。
ファッションの抽象柄=抽象画の現代的継承とも言えるでしょう。余白、リズム、重なり――それらを通して感覚的な美を表現する抽象柄は、まさに“アートが日常と交わる”象徴的存在。
現代では、服そのものがアートピースのように扱われ、プリントデザインが個人の表現手段となっています。抽象柄とは、「アートの自由さをまとう服」そのものなのです。

おわりに
抽象柄(アブストラクトプリント)は単なる模様ではなく、洋服のフォルムや動きを美しく際立たせる構成的デザインです。
具象柄が物語を語るなら、抽象柄は感情と空気感を語る――その“語らない強さ”こそが、現代ファッションを最も洗練させるプリント表現です。
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執筆:代表取締役・テキスタイルデザイナー安田信之:株式会社ALBA・[ 著者情報 ]