私たちが日々身にまとう「布」。その一枚には、繊細な技術と作り手の想いが幾重にも織り込まれています。テキスタイルデザイナーとは、その布という素材を通じて世界観や感情を表現する専門職です。京都の町家に息づく染織の伝統から、最新のデジタルプリント技術まで、テキスタイルデザインの世界は常に進化し続けています。
一言で「テキスタイルデザイナー」と言っても、その姿はさまざまです。糸から布を創り出す造形派のデザイナーもいれば、プリントや花柄などの柄を描くことに特化する図案家もいます。また、アパレルブランドと協働し、洋服の柄として世界のトレンドを生み出すデザイナーもいます。ここでは、3つのアプローチからテキスタイルデザインの奥深さを探っていきます。

目次
1. 布そのものを創る――構造と素材に挑むデザイナー
テキスタイルデザインの原点は、布そのものを造り出すことにあります。糸の選定や染色法、織り方や風合いの研究など、素材から構築するデザイナーは、まさに“布の科学者”。京都の織物産地などでは、伝統的な技法と現代的な感性を融合させながら、新しい質感や構造を探求する活動が続いています。
この分野のテキスタイルデザイナーには、物理や化学といった科学的知識と、美的感覚の両立が求められます。糸一本の違いで、布の動きや光沢、肌触りすら変わるため、素材への深い理解が必要です。布を単なる材料ではなく「作品」としてとらえ、芸術の領域として布を創り出す——それが構造派テキスタイルデザイナーの真髄です。
たとえば、特殊な撚糸を用いた立体的な織物や、植物染料でしか出せない柔らかなグラデーション。そうした素材の表情は、普段の洋服の柄やプリントとは異なるアプローチから生まれます。布という平面が、触れる者の感情を動かす立体作品へと変わる瞬間。そこに、テキスタイルデザインの本質的な魅力が宿ります。

2. 布と柄を生み出す――作家型テキスタイルデザイナーの世界
一方で、布に独自の芸術性を宿す“作家型”のテキスタイルデザイナーもいます。自らの感性や美学を形にし、花柄、幾何学模様、抽象的なプリントなどを描いて世界観を表現します。デジタル技術の発展により、手描きのタッチを生かしたプリントデザインや、手染めとデジタルプリントを掛け合わせた新しい表現方法も数多く登場しています。
作家型のデザイナーの魅力は、ブランドに依存せず、自身の美意識をダイレクトに布へ落とし込めること。アトリエから発信される一点もののテキスタイルは、洋服だけでなくインテリアやアート作品としても高く評価されます。
また、花柄一つをとっても、モチーフの捉え方や線の表情、色彩バランスで印象が大きく変わります。あるデザイナーは繊細で日本画のような表現を追求し、また別のデザイナーは海外向けに大胆なプリントと色彩で勝負する。どちらもテキスタイルデザインという広い海の中で、自らの“表現軸”を模索する航海者のような存在です。

3. 図案家としてブランドを支える――商業の現場で活躍するプロフェッショナル
株式会社ALBA:テキスタイルデザイン事務所のように、アパレルブランドと協働しながら洋服のプリント柄を制作する「図案家」も、テキスタイルデザイナーの大切な一翼を担っています。依頼されるブランドによってテイストやターゲット層は異なり、花柄・ボタニカル柄・幾何学柄・チェックなど、求められるデザインの方向性も実に多様です。
図案家としてのテキスタイルデザインには、「ブランドの世界観を理解する力」と「市場のトレンドを読み取る洞察力」が不可欠です。作家型デザイナーが自分の感性を表現するのに対し、図案家はクライアントの意図に合わせて表現を変える柔軟性が求められます。その中で、ALBAではデジタルプリントから手描きの水彩タッチ、リアルな花柄パターンまで、多様なテイストを自在に生み出しています。
また、商業デザインとして成立させるためには、構図や色数のバランス、量産時の再現性といった実務的な知識も欠かせません。図案家は単なる“描き手”ではなく、ファッション産業の現場でブランドの想いを布に翻訳する翻訳者でもあるのです。プリントの一枚が服の印象を左右するため、図案家の仕事はアパレルの成功を左右する重要な役割を担っています。

あとがき ― 布を愛する心がデザインを紡ぐ
テキスタイルデザイナー、図案家、そして作家型デザイナー。どのスタイルにも共通しているのは、**「布を愛する心」**です。素材に触れ、色を選び、形を整えながら、自分自身の手で“表現”を紡ぐ。その過程には、目に見えない情熱と緻密な技術が息づいています。
京都という土地には、千年以上の染織文化が培ってきた感性が流れています。株式会社ALBAもその流れを受け継ぎ、時代に合ったテキスタイルデザインを通じて、日本の美意識を現代のファッションへとつなげています。
テキスタイルデザイナーの仕事は、服を飾る柄を描くだけではありません。布という命ある素材と向き合いながら、そこに“物語”や“情緒”を織り込むこと。それは、使う人や着る人の感性を刺激し、時に心を癒す力を持ちます。
テキスタイルデザインの未来は、技術の進化とともにさらに広がりを見せています。サステナブル素材、AIによるパターン生成、デジタルプリントの進化など、新しい表現領域が次々と生まれています。けれども、その根底にあるものは変わりません。それは、「布を通して美を表現したい」という純粋な想い。
テキスタイルデザイナーとは、布に命を吹き込み、感情を形にする人。どの道を選んでも、そこには“布を愛するまなざし”が宿っています。その情熱こそが、テキスタイルデザインという世界を豊かにし、人々の日常に彩りを与え続けるのです。
図案のご相談,ご依頼は[株式会社ALBA:テキスタイルデザイン事務所]公式コンタクトフォームからご連絡ください。
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執筆:代表取締役・テキスタイルデザイナー安田信之:株式会社ALBA