テキスタイルデザインは、人や空間に静かに寄り添う存在です。情報や発信があふれる時代にあっても、決して押し付けず、穏やかに届くものこそが心に残る。「寄り添うもの」という美を信じて、布にデザインを紡いでいきたいと考えます。

洋服を主役に、そっと添えるデザイン
テキスタイルデザインは、あくまで洋服を美しく見せるためのものです。柄や色が主張しすぎれば、フォルムの繊細なラインやドレープなどの動きを損ねてしまいます。裾に流れる模様のバランス、脇線をすり抜ける色のリズム感は、洋服の中で呼吸を合わせるように存在するべきです。主役はあくまで「洋服」であり、テキスタイルはそれに寄り添うもの。その控えめな美しさが、纏う人をトータルで最も輝かせてくれるのです。

強く叫ばない発信の力
現代の世界では、数多くの情報に囲まれ、映像も音楽もますますインパクトを求めて進化し、刺激的な表現が増えています。決して悪いことではありませんが、それらをどう受け取るかは、受け手に選ぶ主導権であり、発信者がそれを奪うことはありません。本当に心に届くものは、必ずしも強く叫ぶものだけでは無い。テキスタイルデザインの世界ではどうでしょうか?。発信力のある柄や色がブランドを支える一方で、人の心に長く残るのは、そっと寄り添うような優しい存在です。静かなデザインの中には、穏やかで確かなメッセージがあります。派手さではなく、心の奥に届くような「寄り添うもの」。それこそが、これからのテキスタイルに必要な力だと感じています。

執筆:代表取締役 安田信之(株式会社ALBA)