流れる曲線で紡がれるアールヌーヴォー時代の美意識は、自然界に見られる草花や植物をモチーフにした有機的で優美な装飾性が最大の特徴です。1905年から1906年にかけてフランスで制作された貴重なジャガード生地のサンプルブックは、まさにその時代の熟練職人による繊細で流麗な曲線美を捉えた“幻の資料”と言えます。本アトリエ所蔵のこの書物から、当時の息吹を感じ取りながら当時のデザイン美を現代に伝え、次世代の創作へと繋げていきます。

アールヌーヴォーとテキスタイルの華やぎ
1905年はアールヌーヴォーがヨーロッパを席巻し、建築・ガラス工芸・家具など、多くの分野で“曲線美”が追求された時代です。その美意識はテキスタイルにも深く浸透し、草花や蔦をモチーフにした有機的なデザインが数多く生み出されました。フランスの伝統技術で織られたジャガード生地のサンプルブックには、当時の職人による丹念な手仕事と、今なお色褪せない美しい模様が記録されています。これらの資料は、時代を超えてデザインの源泉として多くの人にインスピレーションを与えています。

アトリエが守る貴重な書物
このフランス古資料は、単に装飾美の証としてだけでなく、19世紀末から20世紀初頭の産業と芸術が交差した“歴史の証人”でもあります。一冊のサンプルブックには、今では再現困難となった染色や織りの手法、当時愛されたセンスが凝縮されています。現代では手に取ることが難しい貴重な書物ですが、1世紀前の美に思いを馳せじっくりご覧いただくことで、創作へのヒントや新たな発想の一助となればと考えます。古書ならではの紙の質感や匂いとともに。
