一概にこう言い切るのは少し乱暴かもしれませんが、テキスタイルデザイナーは「誰かのため」に、作家は「自分自身を見つめて」作品を生み出します。創作への向き合い方ベクトルの違いは、作品の雰囲気や人に与える印象の深さにも大きく影響します。そのちがいを、心の動きに触れながら考えます。


外へ向かうデザイン・誰かのための創作
テキスタイルデザイナーの創作活動は、「外部志向的動機付け(extrinsic motivation)」服や生地を誰が使うのか、着た人がどう感じるのかを想像しながらデザインを作ることです。例えば「この柄を身につけたとき、元気になってほしい」「自信が持てる気持ちになってほしい」などと想いを馳せます。作り手自身の表現よりも、手に取ってくれる誰かに心地よさや驚きを届けることを優先にしています。こうして生まれる模様や柄は、日常にやさしく寄り添い、人の心を明るくしたり、前向きな気持ちにしたりする“外へ開かれた”表現になるのです。

内側を見つめるアート・自分と向き合う創作
一方、作家は「内在的動機付け(intrinsic motivation)」自分自身の感じたことや考えを深く見つめながら作品を作ります。頭や心の中にある思いを言葉にはせず、形や色にして探っていきます。「自分は何を大切にしているのか」「どんなものに心を動かされるのか」と、内側の世界を探ることが創作の原動力になります。このような作品は、作家自身の心の声や体験がストレートに表れやすく、見る人一人ひとりの心の深いところに静かに響く力を持っています。

想う事
私は日々、テキスタイルデザイナーとして誰かのために使われる模様を描いていますが、作家の作品にふれるたび、自分自身の内面が大きく揺さぶられるのを感じます。外の世界とつながるデザインの喜びと、自分の心の奥深くにある思いを見つめ直すこと。そのどちらもが創作を豊かにしてくれると、作家の作品を見るたび改めて実感します。
