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慌てず急ぐ、手描きテキスタイルの速度と品質

手描きで生まれるテキスタイルデザインは、効率を求めれば失われる繊細さと温度があります。納期という制約の中で、速度と品質のバランスをどう保つか。慌てず、しかし確実に仕上げていく。その緊張感の中にこそ、本当のクリエイションの価値があると日々感じています。

灰色のコンクリート壁を背に立つ、花柄の長袖ワンピースを着た人物。.

手描きゆえの時間との向き合い方

テキスタイルデザインを手描きで仕上げる作業は時間がかかります。描き上げても納得がいかず、最初からやり直すことも珍しくありません。プリントの業界はシーズンごとに生産のタイミングがあり、納期との戦いが常にあります。限られた時間の中で最良の成果を出すには、焦りと急ぎを混同しないことが大切です。かつて師匠から「慌てず急げ」と何度も教えられました。慌てることは判断を鈍らせ、線の強弱にもそれが現れます。集中力を切らさぬように筆を取ること。これが手描きデザインの品質を左右します。

机の上に並べられた本、ペン、マグカップのスケッチ。.

効率ではなく、表情を積み重ねる

花を描くとき、葉の角度や厚みの違いを一つずつ確かめながら進めます。裏返ったもの、横を向いたもの、細い形、太い形。それらをどう配置するかで画面の呼吸が生まれます。単なる繰り返し作業のように描けば、効率は上がってもデザインは曇ってしまう。いかに「作業」にならずに描き続けるか。そこにテキスタイルデザイナーの本質があります。効率やスピードに流されず、一筆ごとに向き合うこと。その積み重ねこそが、最終的に見る人の心に残るプリント柄の洋服を作り出します。

緑の葉、紫の花があしらわれた花柄のミディ・ドレスを着た女性。.

後書き

デザインの仕事では、時間と品質のバランスが常に問われます。効率だけを追うのではなく、手描きの過程から生まれる感覚を大切にしながら、一筆一筆を積み重ねていく。その呼吸と速度の調和が、最終的に洗練されたテキスタイルデザインへとつながります。

執筆:代表取締役・テキスタイルデザイナー安田信之:株式会社ALBA・[ 著者情報 ]

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