大量生産では味わえない“あなただけに向けた”が持つ力。デザインに込められた想いが、クライアントの心を揺さぶり感動を生む瞬間について考えます。

他人事から自分事に変わる瞬間
デザインを提出した瞬間に「感動しました」とお言葉をいただくことがあります。その感情は、「自分のためだけに作られた」と感じれたときに宿るのではないでしょうか。ファストファッションの1着では心が動かないとしても、オートクチュールの採寸で自分だけに仕立てられた服には、高揚感と特別感が生まれます。他人事が自分事になった時、人は心を揺さぶられます。その変化の過程こそ、クリエイションの真髄であり、デザイナーとクライアントをつなぐ架け橋なのです。

“あなただけのために”が感動を生む
コンビニ弁当は空腹を満たしても、心までは満たしません。しかし、目の前の人の好みや体調を考え、想いを込めて作られた料理は“心を温める力”を持ちます。テキスタイルデザインも同じく、依頼者を観察し、対話を重ね、背景や好みを掘り下げて形になった図案は、ただの模様ではなく“あなたのため”という物語を映し出します。そのプロセスが伝わった時、クライアントは作品を通してテキスタイルデザイナーの視線や気持ちを受け取り、深い感動を体感するのです。
