オーバープリントは白生地や薄染めベースに色を順次乗せる技法。抜染とは逆の積層染めで、鮮やかなグラデーションや混色効果を生み、版ずれを防ぎます。

オーバープリントの基本定義
染色加工におけるオーバープリントとは、白い生地や薄いベース色で予め染めつけられた布の上に、染料や顔料インクを順番に重ねて染めていく技法です。通常のノックアウト印刷のように下地色を抜かず、そのまま上から新しい色を乗せるため、物理的な混色効果が生まれます。例えば、薄い青ベースに赤を重ねると紫がかった深みが出るのが特徴。テキスタイルプリントでは反応染料や顔料プリントで多層適用が可能で、手描きパターンのデジタル再現に欠かせません。

抜染との明確な違い
一方、抜染は黒や濃色で全体を染めた後、薬品(還元剤や漂白剤)で指定部分の色を抜き、そこに新色を乗せる手法です。オーバープリントが「積み重ね」なら、抜染は「除去+再染色」。デリケートなレース模様やネガティブデザインに向き、京都の伝統染織でも用いられます。誤用を避けるため、ベースの染め濃度をテストし、インク吸収率を確認することが肝要。

実務での活用と注意点
プリントオーバープリントと抜染プリントでは、それぞれ特有の注意点があります。オーバープリントは白生地に直接重ねる場合、下地色の影響で色濁りが起こりやすいため、サンプル染めを複数回行い、自然光や蛍光灯下など環境光の違いでも確認することが重要。抜染プリントは一度抜いた部分が真っ白にはならず、やや黄味のある生成りに近いトーンとなるため、完全な白抜き表現は不可能。色設計段階でその特性を踏まえた配色計画が求められます。
執筆:代表取締役・テキスタイルデザイナー安田信之:株式会社ALBA・[ 著者情報 ]