「布の名前の由来と語源|シルクロードから生まれたテキスタイルの物語」。テキスタイルデザインの視点で、歴史的な背景などを交えて紹介します。シルクロードの交易都市から中国の揚州港、フランスのぼろ布まで、布の名前には、遠い異国や歴史の物語が詰まっています。
目次
オーガンジーの語源
オーガンジーは、かつてシルクロードの交易都市として栄えた「ウルゲンチ(Urganch)」という場所に由来します。現在のウズベキスタン・ホラズム地方に位置するこの都市で作られた、薄くて透明感のある絹織物がヨーロッパに伝わり、「オルガンジー(Organza)」と呼ばれるようになりました。18世紀頃に綿やリネンで再現され、ハリと透け感が特徴の生地として定着したのです。この名前は、遠い異国情緒あふれる交易の歴史を物語っています。

シフォンの語源
シフォンはフランス語の「chiffe」(ぼろ布、破れた布切れ)から来ています。19世紀初頭のフランスで開発された極めて薄く柔らかな絹のツイル織りが起源で、「羽のように軽い、儚い布」というイメージから名付けられました。当初は高級ドレス用でしたが、現在はポリエステルなどで日常使いされる身近な素材に。名前の響き通り、ふわっとした軽やかさが魅力です。

サテンの語源
サテンはアラビア語の「zaytuni」(ザイトゥーニ、揚州絹の意)にルーツを持ち、中国浙江省の揚州(Zaytonと呼ばれた港)で生産された光沢ある絹織物がヨーロッパに伝わったことに由来します。12〜13世紀頃にイスラム圏を経由し、「satin」として広まりました。特徴的なサテン織り(経糸を浮かせて光沢を出す技法)で知られ、滑らかで華やかな質感が名前の高級感を象徴しています。

シルクの語源
シルクは古代中国で発見された絹の繊維に由来し、中国語の「絲(sī)」やサンスクリット語の「sira」(糸)が語源です。ラテン語では中国を「Serica(絹の国)」と呼び、そこから「sericum(絹)」を経て英語の「silk」になりました。紀元前数千年から交易され、人類最古の繊維として「王者の布」と称されてきた歴史があります。

レーヨンの語源
レーヨンは木パルプなどのセルロースを化学処理して作る再生繊維で、フランス語の「rayer」(筋をよこす、条紋にする)に由来します。1924年にアメリカで商標登録された際、光沢が「光線(rayon)」のように輝く様子からこの名が採用されました。絹に似た手触りで「人工絹」と呼ばれ、20世紀初頭の繊維革命を象徴する素材です。

ツイードの語源
ツイードは、スコットランドのツイード川(River Tweed)に由来します。19世紀半ば、イングランドの布商人がこの川流域で生産される粗い毛織物を「tweel」(スコットランド方言でツイードの意)と呼びましたが、商標登録時に「tweed」と誤記され、それが定着しました。厚地で丈夫な斜文織りが特徴で、英国の伝統的なチェック柄ハンティングウェアとして世界的に有名です。

タフタの語源
タフタはペルシャ語の「taftan」(紡ぐ)にルーツを持ち、ペルシャや中東で生まれた薄くて光沢のある絹平織物が起源です。ヨーロッパに伝わり、横方向に細かな畝(うね)が出る緻密な織りで知られます。現在はポリエステルなどで作られ、パーティードレスやリボンに使われる高級感あふれる生地です。

ジョーゼットの語源
ジョーゼットは、20世紀初頭のフランスのドレスメーカー、ジョルジェット・ド・ラ・プランタ(Georgette de La Plante)夫人にちなみます。彼女が考案した薄くてシボ(しわ)のある絹のちりめん織物「ジョーゼット・クレープ」が名前の由来で、強撚糸を交互に使い軽やかでドレープ性が高いのが特徴。現代では合成繊維でも人気です。

シャンブレーの語源
シャンブレーはフランス語の「chambray」(カンブレー)に由来し、フランスのカンブレー地方で生まれた綿の平織物が起源です。13世紀頃に麻で織られ始め、経糸を白く仕上げた緯糸染めが特徴で、軽やかでカジュアルな風合い。デニムに似ていますが、より薄手でシャツやワンピースに適しています。

シャンタンの語源
シャンタンは中国語の「缎子(chántáng、綢缎の意)」から来ており、中国で発展した凹凸のある絹織物が基盤です。ヨーロッパで「chintz」(インドの木綿プリント布)と混同されつつ、独特のざらついた光沢が特徴の生地に。ドレスやスカーフに使われ、豪華さを演出します。

ベルベットの語源
ベルベットは中世ペルシャ語やアラビア語の「belwet」(ふわふわした毛織物)に由来し、インドや中東で生まれたパイル(起毛)織物がルーツです。13世紀にヨーロッパで絹製が高級品として広まり、ビロードのような柔らかな手触りと深い光沢が魅力。現在は綿や合成繊維でも作られます。

キュプラの語源
キュプラは「銅アンモニア人工絹」の略で、銅アンモニア液を使って木パルプのセルロースを再生した繊維です。1930年代に日本で開発され、絹に匹敵する滑らかさと光沢が特徴の高級人絹。名前は製法の「銅(cupro)」を反映した和製語で、エコ素材として再注目されています。

カシミヤの語源
カシミヤはカシミール地方(現在のインド・カシミール地方)のヤギから取れる最高級毛織物で、現地の「kas(h)mir」(カシミール絨毯)に由来します。19世紀にスコットランド経由で欧米に広まり、極細で柔らかな繊維が冬の贅沢品として知られます。寒冷地ヤギの冬毛だけを使用するのが伝統です。

後書き
株式会社ALBAテキスタイルデザイン事務所では、布地に実際に染め上がったときの見え方を常に意識しながら、そこから逆算してデザインを描き上げています。
商談の際には、まずどのようなスタイリングの洋服をおつくりになるのか、そして使用される素材や布地について丁寧にお伺いしたうえで、デザイン制作を進めてまいります。
本記事を通じて、布地への理解をより深めていただくことで、デザインとの結びつきや魅力をいっそう感じていただければ幸いです。
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執筆:代表取締役・テキスタイルデザイナー安田信之:株式会社ALBA・[ 著者情報 ]