テキスタイルデザインは「自分らしさ」を表現する場であり、同時に「他者の想い」を形にする仕事でもあります。アーティストではなく“商業デザイナー”としての立ち位置を意識すると、テキスタイルデザインの本質がより鮮明に見えてきます。

自分の感覚と他者の感覚
テキスタイルデザイナーには、自らの感覚を投影する「オリジナルの創作」と、他者の感覚を形にする「寄り添うデザイン」の2つの在り方があります。どちらも同じテキスタイルデザインですが、立ち位置と目的が少し異なります。本記事では、その中でも「寄り添うテキスタイルデザイン」とは何かを考えていきます。

アパレルデザイナーとの協働
ALBAへのご依頼の中には、アパレルデザイナーが描いた原画をもとに、私たちテキスタイルデザイナーが加工や再現性を考慮しながら、柄として仕上げるケースもあります。その際には、原画に込められた意図や世界観を最大限に尊重します。
たとえ技術的に修正できる箇所があっても、あえて“触れすぎない”という選択をすることもあります。デザイナーの表現をできる限り守り抜くこと――それもまた、私たちテキスタイルデザイナーにとって大切な役割のひとつです。

寄り添う技術とは何か
たとえるなら、ハリウッド映画の特殊メイクのようなものです。もし老いた姿を完璧に再現し、俳優本人がまるで別人のように見えてしまったとしたらどうでしょう。技術的には卓越していても、その俳優らしさは失われてしまいます。真に優れたメイクアップアーティストは、俳優の個性を消さず、「その人が本当に年を重ねたように見せる」ことを重んじます。

控えめで、深いデザイン
テキスタイルデザインでも同じです。自分の感覚を前面に出すのではなく、依頼者が見ている風景や感じている空気を丁寧に読み取り、それをデザインとして翻訳していく。ときには“触らない”という判断もまた、プロフェッショナルな技術のひとつです。控えめでありながら深く寄り添うデザイン——そこに、商業デザイナーとしての美学が宿ります。デザインとは、技術を超えて、心をそっと添える行為なのかもしれません。

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執筆:代表取締役・テキスタイルデザイナー安田信之:株式会社ALBA・[ 著者情報 ]
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