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テキスタイルデザインにおけるバルール(色価)の理解と活用法

色の価値を見極め、調和と立体感を生み出すバルールの理解で、テキスタイルデザインを統制された美しい世界へ。色相・明度・彩度のバランスを最大限に活かす秘訣を紐解きます。

テクスチャーのある表面に赤、青、緑、白、金などの大胆な色の破片が描かれた抽象画。.

バルールとは?色の価値と画面の統制

バルールとは、色が画面の中で果たす「価値」を考える概念です。色の明度・彩度・色相の三要素を使い、色同士の位置関係を整えることで、乱雑になりがちな多色のテキスタイルデザインでも画面全体の調和と統制をもたらします。白黒に変換したときの明度差を把握することが、バルールを整える第一歩。色の明るさや鮮やかさを調整して視覚の奥行きや均衡を作り出す技術といえます。


明度

色を白黒に置き換えると、その色が画面内でどのように扱われているのか、理解しやすくなります。[下図右]手前のテーブルは強いコントラストで描かれています、そのためテーブル部分は視覚的により近く、手前にあるように感じられます。又背景には色数が多く使われていますが、中央の曲がりくねった白いライン以外は明度がほぼ揃っていることで背景として自然に奥に引く印象を作り出しています。

彩度

鮮やかな彩度は注目を集めモチーフを手前に感じさせます。それとは反して白(色を薄くする)または黒(色を濃くする)で濁らせることで奥行きを演出します。例えば、[下図左]鮮やかなりんごを前に、くすんだりんごを後ろに配置すると自然な奥行き感が得られます。これが逆転し、[下図右]背後の位置にあるりんごが鮮やかで、手前がくすんでいると前後空間がおかしく感じます。正しい色価での配置は、デザインの秩序と見やすさを左右する重要な要素なのです。

色相

少し乱暴な分け方ですが色相をグループ分けすると、暖色系と寒色系の2系統に分かれます。暖色系の赤やオレンジは前に迫ってくる印象を与え、寒色系の青や紫は遠くに引っ込む感覚を生み出します。これらの性質もまた、バルールをコントロールする要素として活用することで、テキスタイルデザインに動きや空間感覚を生み出し、多層的で豊かな表現が可能となります。

深い青空の下、青い山々の前にオレンジ、ピンク、白の花をつけたカラフルな木々が立っている。.

このようにバルールを理解し、コントロールすることで、適切な画面配置に近いものを作り上げることができます。ただ、テキスタイルデザインを描き起こす際は、あえてこのバルールを外して違和感を作ることなど、柔軟な操作をします。デザインを描く上では、一定の決まりに基づいて構成するのではなく、理解した上で、感覚的にバランスをとって制作していくことが肝要です。

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