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テキスタイルデザイン制作:「言葉の奥」を読み解く力

クライアントの言葉を表面だけで受け止めるのではなく、その裏にある本当の意図を探る力。それがテキスタイルデザインの品質を決めます。言葉の奥にある想いをくみ取り、デザインに活かすコミュニケーションとは?

青いヤグルマギクと金色の葉が、軽くスケッチされた建物と手書きの文字の背景に重なった細密な水彩画。木々や建築物のディテールが背景に柔らかく溶け込んでいる。.

現場でのやり取り

『↑こちらの画像の背景を暗くしてください』このようなオーダーに対して『承知いたしました。背景を暗くするのですね』と言葉の通りのオペレーションを進めると以下のような画像になります↓。

鮮やかな青いヤグルマギクと茶色がかった黄色の葉が、家のスケッチと柔らかく淡い色調の木々を背景に配された細密な水彩画。花の後ろには手書きの文字がかすかに見える。.

↑こちらの画像は確かに以前のものと比べると背景は暗くなっています。一見良いように見えますが、よく見ると背景が暗くなったことにより、全体が暗く沈み、手前の花束が背景に埋もれ、存在感が希薄になっています。更に少しゴチャつきも感じます。これではクライアントに再度提出しても『何かが違う』となります。

ここで肝要なことは、この指示を受けた時点で「背景を暗くすることで、どのような雰囲気や効果を期待されていますか?」と一歩踏み込んで深掘りの質問をすることです。 クライアントから「実は手前の花のブーケをもっと目立たせたい」「手前のブーケと背景をしっかり分かれているように見せたい」といった具体的な意図を聞くことができれば、背景だけでなく、手前の花束の明度やコントラストの調整なども含めたデザイン提案が可能となります。

前景に紫色のヤグルマギクと枯れ葉、後景に家屋のかすかな建築スケッチと手書きの文字が描かれた、自然と芸術が融合した細密な水彩画。.

↑こちらが画像を整えたデザインです。ファーストのものよりは背景を暗くしていますが、手前のブーケが沈みこんでしまわないよう、花の濃度の調整や彩度の調整を更に加えています。[中央青の花を少し鮮やかに、奥の花はわずかに彩度を下げました。葉っぱの濃度は画面下を暗くして中央に目が行くようにオペレーションしています。]

見比べてみると、左右の差は歴然です。このように、単純な言葉通りではなく、真意や想いを丁寧にヒアリングし、デザインに反映させる姿勢が大切で、テキスタイルデザインを制作する上でのコミュニケーションには欠かせないスキルとなります。

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