テキスタイルデザイナーは非言語のデザインとクライアントの「感覚の言葉」を繋ぐ架け橋。営業ヒアリングで重要なのは文字だけではなく「絵」のメモ。

1.「ヒアリング=翻訳作業」。言葉を形にするテキスタイルデザイナーの役割
テキスタイルデザイナーの仕事はただ美しさを追求するのではなく、クライアントの言葉を具現化する「翻訳者」でもあります。多くの場合、クライアントが発する「可愛い」「繊細に」などの抽象的な表現を、具体的なデザインに落とし込む必要があります。そのため、言葉の向こうに隠された本質を敏感に捉え、形や色、バランス、タッチなどに取り込む力は、デザイナーの営業力に直結します。デザインのための認識は、クライアントの感覚を正確に受け止める高度な技術なのです。

テキスタイルデザイナーの「メモ術」~文字より「絵」が鍵
ビジネスや交渉のシーンで「メモを取ろう」とよく言われますが、テキスタイルデザイナーが使うメモは少し違います。 私たち、言葉だけでなくイラストやスケッチで情報を記録します。この方法なら、抽象的な要望も具体的な絵で相互確認可能です。自分の記録用としてだけではなく、クライアントにも一緒に見てもらいながら進むことで、齟齬が避けられ、コミュニケーションの精度が大幅に向上します。少し大きめのスケッチブックや画用紙にラフなスケッチを描いて、一緒にお絵描きをしながら確認・調整をしてゆく商談はデザイナー独自の「営業スタイル」です。

曖昧なニュアンスは「ゲージ」で言葉を数値にするテクニック
「少し可愛く」「モダンな感じで」といった抽象的なオーダーには、感覚のズレが生じやすいもの。ラフスケッチを見せながら「このタッチがかわいさの目安」と確認すると同時に数値に置き換えて話します。『モダンとクラシカルな感じだと20:80ぐらいでモダン寄りでしょうか』のようなヒヤリングをすると最初に仕上がるデザインの精度が上がります。クライアントがイメージしているものに近づきやすくその後のやりとりもスムーズになります。修正確認をする際には『あと10%ほどモダンに』などのやり取りをする際の基準値が出来上がります。

このように言葉だけを持ち帰るのではなく、対面時に「絵」のメモや具体的な数値に置き換えてイメージ持ち帰ることが大切です。ずれの少ないイメージ共有がクライアントの信頼につながります。