テキスタイルデザインにおいて「リピート(repeat)」とは、ひとつのモチーフや図案を一定の間隔で繰り返し配置し、途切れのないデザイン面を構成する技法を指します。
この「繰り返し」は、ファブリック(生地)や壁紙、ラッピングペーパーなど、広い面積が必要なデザインには欠かせない基本の考え方です。しかし、その構成バランスやつながり方によって完成度が大きく左右されるため、単に“並べる”だけでは美しく仕上がりません。
この記事では、「リピートの種類」や「リピート作成の考え方」、そして「プロの視点から見たデザインのポイント」まで、テキスタイルデザインの基礎として押さえておきたい重要な部分を丁寧に解説します。

目次
リピートとは何か?繰り返しパターンの重要性
リピートパターンとは、モチーフや形を一定ルールで繰り返すことで、無限に続くように見えるデザイン構造です。これにより、以下のような効果を生み出します。
- デザインにリズム感と統一感を与える
同じ形が繰り返されることで、見る人が心地よく感じる“リズム”が生まれます。 - 視覚的な安定感を作る
パターン全体が均等につながることで、空間に安定した印象をもたらします。 - 量産・印刷への適応
生地や紙に広範囲で印刷しても違和感が出ないように、継ぎ目が見えない連続性が必要です。
一見シンプルな原理ですが、モチーフの配置・余白の取り方・色のバランスを誤ると、リズムが乱れてしまったり、繰り返しの境界が目立ってしまいます。
つまり「リピート」は、見た目の美しさと機能性の両立を求められる、テキスタイルの基礎技術でありながら最も奥深い工程のひとつなのです。
正送りパターン(四方リピート)とは
「正送りパターン」または「四方リピート」とは、縦・横の方向にモチーフをそのまま規則的にスライドして配置する最も基本的なリピート方法です。
ひとつのリピート単位(柄パーツ)をそのまま上下左右に並べることで、シンプルながらも整った印象のデザインを作ることができます。
特徴とメリット
- 上下左右の端がきれいに接続し、継ぎ目のないパターンが作れる。
- 計算がしやすく、初心者でも扱いやすい。
- 壁紙、テーブルクロス、幾何学模様など、整然とした印象を与えたいときに最適。
デザインのコツ
正送りパターンでは、リピート枠の四辺すべてがシームレスにつながるように設計することが最重要です。たとえば花や幾何モチーフの一部が左端にある場合、それが右端にも同じ位置に現れなければなりません。
Photoshopなどのデジタルツールでは「オフセット機能」を使って、境界が自然につながるか確認すると効果的です。
また、単調に見えやすいという弱点を補うために、配色の変化やモチーフの大小を工夫することで、視覚的なリズムを豊かにできます。

ハーフステップ送り(レンガ積みリピート)
次に紹介する「ハーフステップ送り」は、モチーフをレンガのように半分ずつずらして配置するリピート方法です。
縦はそのまま繰り返し、横方向を半ピッチ(モチーフの幅の半分)ずつずらすことで、動きのある印象を生み出します。
特徴とメリット
- 規則的な繰り返しでありながら、動きとリズムが加わる。
- モチーフ間の隙間が均等になり、自然なつながりが生まれる。
- ファッション衣料の総柄プリントなどで広く使用されている方法。
デザインのコツ
レンガを積むようなずらし方によって、視線が斜め方向にも流れるため、同じモチーフでも表情が豊かになります。
柄の方向性を意識しすぎず、全体の“流れ”を感じさせることがポイントです。自然の葉や花柄などを構成する際は、リピートとしての整合性よりも、“流れるようなリズム”を優先すると美しく仕上がります。

連続パターンの作成プロセス
テキスタイルのリピート柄づくりは、単に図案を並べるだけではなく、構成・つながり・余白の計算が求められる高度な工程です。以下は一般的な制作手順の流れです。
- モチーフを描く
アナログ(手描き)でもデジタルでもOKですが、形やタッチの統一感を大切にします。 - リピート枠を設定
使用目的に合わせてリピートサイズ(例:30cm×30cmなど)を決定します。 - モチーフを配置する
配置バランスを取りながら、四辺の連続性を意識して並べます。 - つながりを確認する
Photoshopなどで「オフセットフィルター」を使用し、端の接続部分が自然に見えるか調整します。 - リピートチェック出力
試しに数回分繰り返して全体を確認。違和感がなければ完成です。
特に、完成後にリピート境界が目立たないよう、モチーフの端に中途半端な線やパーツが残っていないか丁寧に確認することが重要です。
リピートデザインを美しく仕上げるポイント
- 大きさのリズムをコントロールする
すべてのモチーフを同じサイズにすると単調になるため、大・中・小のバランスをミックスすると奥行きが出ます。 - 余白設計を意識する
モチーフ間の空間も「デザインの一部」です。抜けのある構成が柄の軽さを生みます。 - 全体を俯瞰で見る
1単位ではなく、数単位を並べた状態でバランスを見ると、リズムの偏りを防げます。 - 方向性もデザインに利用する
すべてを同じ向きに並べると固い印象になるため、あえて回転や反転を混ぜると自然な流れが生まれます。
まとめ
リピートデザインは、テキスタイルの基礎であると同時に、デザイナーの“表現力”が如実に現れる奥深い分野です。
「正送り」と「ハーフステップ送り」を理解し、それぞれの特徴を生かして構成バランスを工夫することで、どんな柄も魅力的に見せることができます。
生地という広いキャンバスの上で、モチーフが自然に連続し、心地よいリズムを奏でる。
その感覚をつかむことが、テキスタイルデザインの第一歩なのです。
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執筆:代表取締役・テキスタイルデザイナー安田信之:株式会社ALBA・[ 著者情報 ]